私を拾ってくれますか?
教室の入り口でひと騒動の後、紗奈が項垂れながら自分の机に向かうのを見届ける。自分も席に着こうとすると、奈垣くんの視線を感じた気がして奈垣くんの席の方に目をやる。やはり私を見ていたようで、ばっちり目が合った。でも何もなかったようにすぐに逸らされる。
何、この空気。挨拶もしてくれないほどなんて、あのキス未遂の意味がさらに分からなくなる。席も離れているから、わざわざ話しかけに行くのも気が引けて、何も話さずに自分の席に座った。
こっちを見ていたのに、目が合ったらすぐに逸らすって、どう言う意味だったの?そう切り出す勇気もないけど。
結局、授業の合間も昼休憩の時も話しかけられず話しかけず、目も合わないまま放課後に。1人残って日直当番の仕事の掃除を終わらせ、職員室に日誌を届けて足早に教室に戻る。
急いでいるのは、ボクシングに行ったであろう奈垣くんを、見に行きたかったから。部活に励む奈垣くんはどんな人なのか。私を避ける理由も、ついでに盗み聞きできたらなんて、ずるい事を考えている。
さっきも教室に誰も居なかったし、当然のように1人しか居ないから、戸締りの確認をしないといけないな…。なんて考えて気を抜いていたが、教室に着く手前で聞き覚えのある甲高い声が聞こえてきて、足を止めた。