私を拾ってくれますか?
この声、ボクシング部のマネージャーだ。突然教室に入ってきて、謎の悪意を向けてきた人。どこにいるんだろう。まさかとは思ったけど、目だけを教室に覗かせてみた。
そこには帰ったはずの奈垣くんと、マネージャーも居た。仲良さげに肩をくっついて話し込んでいて、教室にカバンを置いてきたのに、取りに行けないし、廊下に座り込んで話が終わるのを待っていると、聞きたくなくても聞こえてきた会話に、つい聞き耳を立ててしまった。
「ねぇ爽太ー。いつになったら付き合ってくれんの?早く彼女にしてよ」
「だから付き合わないって。お前はただのマネージャー」
「えー。じゃあマネージャー辞めよっかな。そしたら付き合ってくれる?」
思わず顔が下を向いた。旭に振られて凹んでいたのを、奈垣くんが励ましてくれただけ。でも別れ際に私を守ってくれただけだとしても、不意打ちのキス未遂に、都合よく期待していた。
無愛想だと言われていた奈垣くんが、私に見せてくれる優しさに甘えていた。マネージャーは違うみたいだけど、奈垣くんだって好きな子がいて、私なんかただの子どものあやしみたいなもんだよね。