私を拾ってくれますか?
意思に反して溢れそうになる涙を、上を向いて引っ込めて立ち上がり、誰も居ないと暗示をかけて教室に入った。
突然の物音にびっくりしている2人。私も知らなかったように振る舞った。
「うわっ、居たんだ。…また明日」
敢えてマネージャーは見ずに、誰に向けているのか分からない作り笑顔を振りまいて、机の上のカバンを大雑把に上から掴み、すぐに教室を出た。
出る手前、奈垣くんが目を大きく開けて、焦って私を追いかけようとする仕草が視界の端に映る。でもすぐに、マネージャーが引き留めているのも見えた。
〝爽太、行かないでよ〟という声も聞こえて、やっぱりあの子は奈垣くんが好きなんだと確信し、何だか悲しくて悔しかった。追いつかれないように足を動かしたいのに、足が止まりそうになる。追いかけてきて私の手を掴んでほしい。
でもその願望は、きっと傷に貼られた絆創膏のようなもので、空いた穴を埋めてくれるものに縋りたいだけなのかもしれない。そう思わないと、奈垣くんへの気持ちが更に1歩先に進んでしまいそうだった。