私を拾ってくれますか?
「うぉ。びっくりした…」
「…おはよ」
声のする方に顔だけを向けると、無愛想で有名なクラスメイトの奈垣 爽太が教室の入り口に立っていた。確かボクシングをしてるんだっけ。制服を着ているけど顔には汗が滲んでいて、さっきまでボクシングをしていたんだろう。
「奈垣くんか…」
小声で呟いたけど、奈垣くんの方も〝飯田か〟と同時に呟いていたので、多分私の言葉は届いていない。汗をガシガシと拭きながら席に着く奈垣くん。相変わらず無愛想で、何を考えているか分からない。
みんなが教室にやってくるまでの一時間、私と奈垣くんだけで無言で二人離れた席、このまま時間をやり過ごすのはきつい。
「毎日俺が一番なんだけどさ。教室で一人居るの、特別感あるから好きなんだよね」
「ごめんなさい…。今日は一人になれなくて」
「いやいや、そういう意味で言ったんじゃないから」
クラスの人とはあまり話さないから、みんなの性格は知らないけど、奈垣くんは噂通り無愛想なのは分かった。
遠回しに私がいつもと違う時間に来たことを、嫌味っぽく伝えてくるところ、教室に早く着いたことを後悔させられた。一応否定はしてくれたけど、小さくため息も聞こえたし、俺を一人にさせてくれ、察してくれって雰囲気が伝わってくる。