私を拾ってくれますか?
察してあげようと、まだ汗を拭いている奈垣くんの隣をそっと通り廊下に出ようとすると、〝飯田〟と低い声で呼び止められた。思わず背筋が伸びて、悪いことをした気分になった。
「これ見て」
「何を?」
私の顔を見ながら、人差し指は廊下側の壁を向いている。奈垣くんの指を辿って壁を見ると、奈垣くんの飲みかけのペットボトルの水が窓から差す光に照らされて、差した光が水に反射し壁に虹が写っていた。
「すご」
「だろ?天気良いと、いつも壁にこれ作って遊んでる」
「奈垣くんって子どもみたい」
「うるせっ。子どもで結構」
「ごめんごめん(笑)」
奈垣くんを子どもなんて言ったけど、私も結構感動している。虹はなかなか見れるものでもないし、見つけた時の喜びと、消えるまで見つめていたくなる中毒性は大きい。
二人だけの時間が苦手と言いながら、そんな時間も忘れて虹を見ていると、奈垣くんから柔らかい視線を感じた気がして、奈垣くんを見た。すると、やはり私を見ていたようで、頬杖をついて虹を見る私を微笑ましく見ていて、〝え、何。〟と、こちらが言いたい言葉を先に言われた。