私を拾ってくれますか?
「奈垣くん、おはよ」
「……」
表情は変わらず、私の挨拶も無視して教室へ早足で向かっていった。
濡れた髪が束になって顔に当たって、それを鬱陶しそうにかき上げている姿に、釘付けになる。でも無視をされた理由が何となく分かるから、胸が締め付けられる。
この胸の締め付けは苦しいから?どっちなんだろう。
教室に入ると、奈垣くんはもう自分の席に座っていて、顔を机に伏せていた。ゆっくり近づいてみる。さっきのこと、奈垣くんの感情が分からない。
「おはよう」
「…うん。おはよ」
「さっき、下駄箱のとこで会ったね」
「そうだな」
奈垣くんは相変わらず机に伏せたまま。私の受け答えも、怒っているのか一言しか返ってこない。
「旭とは、別に何もないから。ただ朝会って話してただけだから」
「俺、何も聞いてないけど」
弁解に聞こえたかな。ムクっと突然体を起こすと、まだ無表情で、ぶっきらぼうに当然の言葉が返ってきた。
「いや、そうなんだけど…。うん、ごめん」
それ以上は何も言えなくて、なぜか謝って自分に席に着く。