私を拾ってくれますか?




「奈垣くん、おはよ」


「……」




表情は変わらず、私の挨拶も無視して教室へ早足で向かっていった。


濡れた髪が束になって顔に当たって、それを鬱陶しそうにかき上げている姿に、釘付けになる。でも無視をされた理由が何となく分かるから、胸が締め付けられる。


この胸の締め付けは苦しいから?どっちなんだろう。



教室に入ると、奈垣くんはもう自分の席に座っていて、顔を机に伏せていた。ゆっくり近づいてみる。さっきのこと、奈垣くんの感情が分からない。




「おはよう」


「…うん。おはよ」


「さっき、下駄箱のとこで会ったね」


「そうだな」




奈垣くんは相変わらず机に伏せたまま。私の受け答えも、怒っているのか一言しか返ってこない。




「旭とは、別に何もないから。ただ朝会って話してただけだから」


「俺、何も聞いてないけど」



弁解に聞こえたかな。ムクっと突然体を起こすと、まだ無表情で、ぶっきらぼうに当然の言葉が返ってきた。



「いや、そうなんだけど…。うん、ごめん」




それ以上は何も言えなくて、なぜか謝って自分に席に着く。



< 35 / 39 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop