私を拾ってくれますか?




それはあなたですよね?と言いかけたのを飲み込んで、乾き笑いをした。


直接顔を合わせたのは、奈垣くんと初めて話した日だけ。軽く会釈をして、それ以来は話していない。そんな人に付き纏うなんて人聞きの悪い言い方、よくできるなと思う。





「爽太に、邪魔しないでくれるかな?」


「…邪魔?」


「爽太、ボクシングの調子が狂ってるの。練習試合が近いのに、部活にも来なくなったし」


「私のせいだって言いたいの?」


「それしかないでしょ。彼女でもないくせにさ」





彼女じゃないから、近くに居たら迷惑になる。自分で分かっていることを、改めてマネージャーに言われるのは、より深く傷つく。


1歩近づかれて、それ以上私の領域に入ってほしくなくて、同じように1歩後ろに下がった。そんな私を弱い獲物でも見下げるように、こちらを見てくるマネージャー。




「付き合ってないんだよね?」


「付き合っては、ないけど…」


「だったら爽太に近づかないで」



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