私を拾ってくれますか?
「今日は奈垣くん、確か日直だったよ」
「だるいとか言って、サボってるかもね」
「私は帰る」
「紗奈、本当にありがとう」
「…頑張れ」
いつも通り、下駄箱で思いっきり手を振り合って、紗奈は家に、私は教室に戻った。下駄箱から教室に戻る間、奈垣くんにどう話しかけてどう謝ろうか、道筋を立てる。手汗は止まらないし、心配になるくらい鼓動がうるさい。
ついに教室についた。いざ目の前に来ると、足が動かなくなる。もう逃げちゃダメだ。ここまで来たんだから。
まだ奈垣くんが教室にいることを確認して、中に入る。私が入ってきたことも気づいていないようで、〝悩ましい…〟と机に体を預けている奈垣くん。
黒板の文字も消えていないし、日誌もほぼ真っ白。今の時間まで何をしていたのか、サボりも良いところ。うねうねと机の上で体を捻らせる奈垣くんに〝明日も日直やり直し!〟と担任っぽく声を荒げてみると、担任だと信じたのか本当に驚いていた。
私だと気づくと緊張が解け、目尻を下げる奈垣くん。何やら話そうとしていたけど奈垣くんの表情を見たら泣いてしまいそうになって、奈垣くんに背を向けるために黒板消しに手をかけた。顔を見ると、自分も傷つきたくないし奈垣くんも傷つけたくないしで、言葉が出なくなる。
この文字を全部消すまでに、話すことを考えて、それを冷静に伝えよう。