私を拾ってくれますか?
「和倉と帰ったんじゃなかったっけ」
奈垣くんの弱々しい質問が飛んできて、考えていたセリフは全部消えた。きっと奈垣くんも私と同じ気持ちで、同じように探ってきているはず。
そんな2人の間に、駆け引きはいらない。
「そうだよ。だけど、奈垣くんが日直だったから」
「…ちょっと意味が分かんないんだけど」
「だるいとか言って日直サボってるんだろうなって思ったから、手伝いに戻ってきたの!」
持っていた黒板消しで奈垣くんの頭の上にチョークの粉を撒く。真っ白になった髪を見て、2人で久しぶりに笑い合えた。
ようやく、いつもの2人に戻れた気がした。2人の空間は、とても穏やかで心地良い。そして、奈垣くんの特別になれる瞬間。これからも奈垣くんの特別な人でいたい。
「私は奈垣くんに話したいことがあるけど、奈垣くんは私に話したいこと、ある?」
「…もちろん、ある。いっぱいあるんじゃない。飯田が他のやつに取られたくない、とか」
もう、これ確定で良いんだよね。探り合うようなことはしないで、ちゃんと向き合って。ちゃんと自分の口で伝えないと。ようやく奈垣くんから聞けた、真っ直ぐな言葉に目にじんわりと涙が溜まり、それを大雑把に拭うと口角を上げた。