からかわないでよ、千景くん。
入場門の前。
心臓がドクドクしてる。
借り物競争が始まるまで、あと少し。
チラッと千景くんの方を見る。
でも、隣の友達と楽しそうに話してて、私のことなんてまるで眼中にないみたい。
…ねぇ、千景くん。私に言ったよね?
「お題を見て俺が思い浮かんだら、真っ先にこっち来てね」って。
もしかして、忘れてる? あれ、冗談だったのかな…。
不安が胸の奥でじわじわ広がってく。
「なずな、行かないの?」
志緒ちゃんの声が背中を押す。でも、足が動かない。
じーっと千景くんに念を送る。
こっち見て。お願い、千景くん。私を見て。
すると、パチッと目が合った。
その瞬間、時間が止まった気がした。
千景くんが、口を動かす。
“がんばってね”って。
「が、頑張れそう…」
顔が熱い。視線を感じた瞬間、心まで熱くなった。
「顔赤いけど大丈夫?」
志緒ちゃんが不思議そうに首をかしげる。
うん、大丈夫。今、千景くんからパワーもらったから。 私、頑張れるよ。