からかわないでよ、千景くん。
なずなの身体をそっと抱きかかえる。
その軽さが、今にも消えてしまいそうで怖くて、俺は背中をぽんぽんと撫でた。
まるで、自分の心まで落ち着かせるように。
「すき…だい、すき…」
小さな声が、俺の胸元で震えた。
その瞬間、心臓が跳ねる。
好きなんて…そんな顔で言わないでよ。
潤んだ瞳で、震える声で、そんなふうに言われたら――
また、抑えられなくなる。
「…なずなのこと、めちゃくちゃにしたくなる」
ぽつりとこぼれた言葉は、俺自身にも驚くほど正直だった。
その衝動は、甘くて、危うくて。
俺のせいで、なずなが壊れてしまうところを…見たいなんて思ってしまう。
でもそのあと、全部包み込んで、溶かしてしまいたい。
ぐちゃぐちゃになるくらい、甘やかして、愛したい。
なずなの髪に顔を埋めながら、俺はそっと目を閉じた。
この気持ちが、なずなを傷つけないように。
でも、どうしても――止められない。