からかわないでよ、千景くん。
「ち、かげくん…」
なずなが、俺の胸元で小さく震える。
「なに?」
俺が答えると、なずなは少しだけ顔を上げて、潤んだ瞳で見つめてきた。
「私のこと…す、き?」
………なずなは、俺のことなんにも分かってない。
「好きだよ。なずなより、ずっとね」
そっと、おでこにキスを落とす。
隣の席になった、あの日からずっと。
「え?それってどういう―――」
言いかけた唇を、俺はキスでふさぐ。深く、静かに、でも確かに。
「内緒」
好きだから、いじめたくなる。
困らせたくなる。泣かせたくなる。
でも、誰にも渡したくない。
なずなには、きっと一生わかんないだろうね。