からかわないでよ、千景くん。
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学校に着いて、いつものように下駄箱で靴を履き替えようとしたそのとき—— ふと目に入ったのは、千景くんだった。
制服の襟を少しだけ乱したまま、大きなあくびをしながら靴を履き替えてる。
その仕草が、なんだか…かわいくて。思わず、胸がきゅんって鳴った。
「千景くん、おはよう」
声をかけると、千景くんはゆっくり顔を上げて、私の方を見た。
「…おはよう」
その瞬間—— え?なんか…千景くんの周り、キラキラしてない?
朝の光のせい?それとも、私の目がおかしいの?
いや、違う。
なんだか、いつもよりもずっとかっこよく見える。
眠そうな目も、無造作な髪も、全部が絵になるみたいで。
昨日のことが頭をよぎる。あのドキドキした夜。気持ちが通じ合ったはずなのに、まだ信じられないみたいで。
でも、こうして目の前にいる千景くんが、 私に「おはよう」って言ってくれるだけで、胸の奥がじんわりと熱くなる。