からかわないでよ、千景くん。
「でも、私…千景くんなら意地悪されるの嫌じゃないけど…もっと手加減はしてほしいかも」
志緒ちゃんの前で、ぽつりとこぼした本音。
千景くんの意地悪は、今に始まったことじゃない。
でも、好きになってからは——なんだか、キャパオーバー。
心が忙しくて、毎日がジェットコースターみたい。
「千景に言ってやったらいいよ!」
志緒ちゃんの言葉に、思わずうなずく。
「そ、そうだね…!」
「千景のとこ行かないの?」
千景くんのところ。
屋上の扉の前。いつもの場所。 でも今日は——
「い、行かない」
「ふーん」
志緒ちゃんの声が、ちょっとだけ含みを持ってる。
でも、今の私には無理。だって、今日の千景くん——すっごくかっこよくて。
視界に入るたび、心臓が跳ねる。
目が合うと、息が止まりそうになる。しかも、百発百中で目が合うんだもん。
…ずっとこんな状態だったら、どうしようっ!