からかわないでよ、千景くん。
私のことなんて、千景くんには全部お見通しなんだろうな。
今日の私の挙動不審も、きっと全部バレてる。
でも、それでも——聞いてみたかった。
「…千景くんは、体育祭のあと何で不機嫌だったの?」
少しの沈黙。でも、すぐに返ってきた答えは、意外にもすんなりしていて。
「笹村に嫉妬…したからかな」
え。 千景くんが、笹村くんに嫉妬…?
「でも、あれは…しょうがなくて」
借り物競争。
私は千景くんと手を繋いで走るつもりだった。 でも、笹村くんと走ることになって——
「分かってるよ。でも、どうしようもなくイラついた」
千景くんは、伏せていた体をゆっくり起こして、頬杖をついたまま私を見つめてくる。
その目が、まっすぐで。 優しくて。でも、どこか熱を帯びていて。
…感じる。
その目から、伝わってくる。
“好き”って。 言葉にしなくても、わかる。
私のことを見つめるその目が—— たまらなく好き。
胸が、ぎゅっとなる。嬉しくて、苦しくて、でも幸せで。