からかわないでよ、千景くん。



顔が熱い。
恥ずかしくて、目を合わせられない。

千景くんは、大きなため息をついた。



「…なんなの、それ。ずるい」


「えっ?」



お、おかしかったかな…?

不安になって顔を上げると、千景くんはまたため息をついて、じっと私を見てくる。



「…意地悪なずな」


「へへっ」



笑ってしまった。
だって、いつも意地悪してくるのは千景くんなのに。今日は、私がちょっとだけ仕返し。


でもそれは—— 千景くんが、私のことを好きだからなんでしょ?


ちょっとだけ、千景くんの気持ちが分かった気がする。

好きだから、意地悪したくなる。
好きだから、困らせたくなる。
好きだから、触れたくなる。


ドキドキ、ドキドキ。
心臓はずっと鳴りっぱなし。



すき。
千景くん。


< 192 / 277 >

この作品をシェア

pagetop