からかわないでよ、千景くん。
「ほんとーーーに可愛いんだから、自覚して?最近、なずなといると男の視線感じるの!」
えっ。
何度も言うけど、私は別に“可愛い”部類には入らない。
だから、それは志緒ちゃんの気のせいだと思う。
「それは、みんな志緒ちゃんのこと見てるんだよ?志緒ちゃん、美人だから」
そう言うと、志緒ちゃんは顔を真っ赤にして——
「もう!なんでこんなにいい子なの!?」
ぎゅっと抱きしめられた。ちょっと苦しいけど…志緒ちゃんの腕の中は、いつも安心する。
「でも、ほんとに気を付けてね?」
「はーい」
その時は、軽く返してしまった。
でも——
この時の志緒ちゃんの忠告を、もっとちゃんと聞いておけばよかった。
…この後すぐに、あんなことが起こるなんて。
この時の私は、まだ知らなかった。