からかわないでよ、千景くん。
「月城さんと話の途中だったんだけど、邪魔すんなよ」
吐き捨てるように言ったその瞬間—— ドカッと鈍い音が響いた。
「いってーな!!」
あ、あの…千景くん?
気づけば、千景くんの長い右足が彼に向かって伸びていた。
蹴られて、座り込む彼。
「誰の女に手出してんの?」
低くて、鋭い声。千景くんの目が、怒りで燃えてる。
もう一回蹴るそぶりを見せると——
「分かった!分かった!!千景の彼女だって知らなかったから!ごめん!!悪かった!」
早口でペラペラと喋りながら、彼は速足で倉庫を出て行った。
ふーっと、千景くんのため息。
まずい。怒ってる。
その音だけで、胸がぎゅっとなる。