からかわないでよ、千景くん。
今、家に帰っても一人。
誰もいない部屋。静かすぎる空気が、さっきの怖さを思い出させる。
やだ。帰りたくない。
ぎゅっと、千景くんの手を握り締める。その手のぬくもりに、すがるように。
「…帰りたくない」
ぽつりと呟いた言葉に、千景くんは少しだけ目を見開いて—— すぐに、柔らかく笑った。
「いいよ。家、来る?」
その言葉に、ドキッとした。
でも、すぐに「…うん」と頷いた。
少し積極的だったかな。
でも、今はただ—— 千景くんと一緒にいたかった。
この手を離したくなかった。