からかわないでよ、千景くん。

*

*

*



「そこ、適当に座ってて」



初めての千景くんのお家。
玄関をくぐった瞬間から、心臓がずっとドキドキしてる。
千景くんは「飲み物とってくる」と言って、キッチンへ。

ソファに座って、そっと深呼吸。
当たり前だけど、千景くんの匂いでいっぱい。
この空間にいるだけで、胸がぎゅっとなる。



「はい、飲んで」



千景くんが差し出してくれたのは、ホットココア。
湯気がふわっと立ち上って、手のひらにじんわりと温かさが広がる。



「…あったかい」



思わずこぼれた言葉に、千景くんが隣に座って、同じものを飲みながら言う。



「落ち着いた?」



その声が、優しくて。
さっきまでの怖さが、少しずつ溶けていく。


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