からかわないでよ、千景くん。



あぁ、まずい。

私って、ほんとに——



「…千景くん」



名前を呼ぶだけで、胸がいっぱいになる。
怒ってる顔も、嫉妬してる顔も、全部が千景くんで。

どうしようもなく、好き。



「確かに、少し怖いけど…その倍、ドキドキしてるもん…」



好き。かっこいい。千景くん。すき。



「だから、もっと…」



——もっと触って。


そう言いかけたところで、頭の上に固定されていた両手がふっと解放される。



「はぁ…だめだろ、ここでそんなこと言うの」



きょとんとする私を見て、千景くんは少し怒った顔。
でもその手は、優しく私のシャツのボタンを一番上まで止めていく。



「…千景くん?」


「なずながそう言うと、俺、ほんとに止まれなくなるから」



その言葉に、胸がぎゅっとなる。


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