からかわないでよ、千景くん。
「千景くん、激しいんだもん…」
思い出すだけで、胸が高鳴る。
噛みつくようなキス。
触れられるたびに、心がいっぱいいっぱいになる。
「煽ったのは、なずなでしょ?」
「……」
煽ったつもりなんて、なかったもん…。
「忘れられた?」
その言葉に、ハッとする。
そうだ。
体育館倉庫のことなんて、頭になかった。
千景くんとのキスで、心がいっぱいで—— 思い出す暇もなかった。
「…今はもう、千景くんでいっぱい」
そう言うと、千景くんはふっと笑って、「かわいいね」とおでこにキスを落とす。
すき。もう、なんで寝ちゃったの、私のバカ。
でも——
「でも、なずな。次は、止まれる自信ないから。なずなが嫌って泣き叫んでも絶対止めてあげない」
その言葉に、息が止まる。
千景くんの熱い目。まっすぐで、強くて、私を逃がさない。
あぁ、もう私、逃げられない。
でも、それが少しだけ嬉しいって思ってしまうのは——
やっぱり、千景くんのせいだ。