からかわないでよ、千景くん。
私だけにして、千景くん。
「じゃ、席替えするぞー」
朝のホームルーム。
いやだと嘆く後ろの人たちと、早くしようと楽しみで仕方なさそうな前の人たち。
私はというと——
「離れちゃうね、なずな」
「……」
頬杖をつきながら、離れることに全く寂しくなさそうな千景くん。
「千景くんは、寂しくなさそうだね?」
そう言うと、千景くんはニコって笑った。
その笑顔が、なんだか余裕たっぷりで—— ちょっとだけ、ずるい。
「なずなが寂しがってくれるなら、俺も寂しくなるかも」
「……ずるいよ、それ」
「なずなこそ、顔に出てるよ。離れたくないって」
「出てないもん…!」
「出てる。俺には分かる」
その言葉に、胸がきゅっとなる。