からかわないでよ、千景くん。
新しい席から、千景くんの後ろ姿を眺める。
千景くんの隣は——平さん。
平さんは、1年の時も同じクラスだった。
その時から、千景くんのファンだって—— 志緒ちゃんから聞いたことがある。
そんな人が隣なんて、正直、気が気じゃないよ…。
それに、もう楽しく喋っちゃってるし…。
はあ、とため息をひとつ。
「——あ、幸せ逃げた」
隣から聞こえてきた声。
「笹村くんっ」
「よろしくね、月城さん」
爽やかスマイル。まぶしいくらいの笑顔。
笹村くん…!
「体育祭の後、千景と付き合ったんだってね」
「まぁ、そうです…はい」
そう言えば—— 笹村くんには、付き合う前に 私が千景くんのこと好きだって、バレてたかも。
笹村くんは、 「良かったじゃん」なんて、ニヤニヤした顔で見てくる。
「千景と離れて寂しい?」
「そりゃあね…」
今までが、奇跡だったんだよね。
隣に好きな人がいるなんて。