からかわないでよ、千景くん。



笹村くんにバイバイして、ふと千景くんの方を見ると——



「…っ、」


「なずな。こっち来て」


「えっ…」



グッと手を引っ張られる。

千景くん、怒ってる。さっき、怖い顔してた。
なんで…?

連れてこられたのは、久しぶりに来た屋上の扉の前。
ホームルーム直後なので、下の階から声がたくさん聞こえる。



「ち、千景くん?」



私の目の前に立つ千景くんは—— あきらかに不機嫌。
眉が寄ってて、口元がきゅっと結ばれてて。



「笹村と何話してたの?」


「え…」


「俺に言えないこと?」



そうじゃ、ないけど—— 言葉が喉につかえて、出てこない。



「千景くん、なんだか怖いよ…」



久しぶりに見た、ご機嫌ななめの千景くん。

鋭い目とバチっと合って、たまらず逸らしてしまった。

あ…やっちゃった。って思ったけど、もう遅い。


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