からかわないでよ、千景くん。
「私、千景くんのことは好きだけど、 ただの推しとファンっていうか… 恋愛感情はこれっぽっちもないから!」
平さんは、そう言ってから—— 少しだけ顔を寄せてきた。
「それに、千景くんはいつも月城さんのこと気にしてるよ。 だってね…」
耳元で、そっと囁かれた言葉。
その瞬間、顔が熱くなる。
「……っ」
心臓が、ドクンと跳ねた。
「ふふ。月城さん、愛されてるね!」
そう言って、平さんは自分の席へ帰っていった。
教室のざわめきの中で、私はひとり、胸の奥がじんわりとあたたかくなるのを感じていた。
昨日は、千景くんの言葉に泣きそうになって——
今日は、平さんの言葉に泣きそうになってる。
「……千景くん」
スマホの画面に、「大丈夫?」の文字。
「早く元気になって。会いたいよ」
指が、震えながらも—— 送信ボタンを押した。