からかわないでよ、千景くん。



「私、千景くんのことは好きだけど、 ただの推しとファンっていうか… 恋愛感情はこれっぽっちもないから!」



平さんは、そう言ってから—— 少しだけ顔を寄せてきた。



「それに、千景くんはいつも月城さんのこと気にしてるよ。 だってね…」



耳元で、そっと囁かれた言葉。
その瞬間、顔が熱くなる。



「……っ」



心臓が、ドクンと跳ねた。



「ふふ。月城さん、愛されてるね!」



そう言って、平さんは自分の席へ帰っていった。
教室のざわめきの中で、私はひとり、胸の奥がじんわりとあたたかくなるのを感じていた。

昨日は、千景くんの言葉に泣きそうになって——
今日は、平さんの言葉に泣きそうになってる。



「……千景くん」




スマホの画面に、「大丈夫?」の文字。



「早く元気になって。会いたいよ」



指が、震えながらも—— 送信ボタンを押した。


< 234 / 277 >

この作品をシェア

pagetop