からかわないでよ、千景くん。
泣きそうになっていると、千景くんの左手が、そっと伸びてきた。
私の手を、ぎゅっと握る。
「病院は、朝行ってきたよ。だから、だいじょーぶ」
喋るたびに咳をして、声がかすれてる。
私が、代われたらいいのに。代わってあげられたら、どんなにいいか。
「千景くん、おかゆかうどん食べれる? お腹空いてない?」
「……あー……」
返事は曖昧で、目もとろんとしてる。
私になにかできること、ないかな。
「何もいらないから……今は、ここにいて」
「……ち、千景くん」
ぎゅっと、私の手を握る力が強くなる。
その温度に、私もそっと手を重ねて応える。
「なずなに、会えて嬉しい。これ、夢?」
ぼーっとした声で、千景くんがそう言う。
「夢じゃないよ、千景くん」
「……そっか。よかった」
「私も、嬉しい……大好きだよ」
私の気持ちが全部、この指先から伝わればいいのに。
「昨日、ごめんね……私、寂しかったの。千景くんが、私以外の女の子といるのが嫌だったの。私だけの千景くんでいてほしいのに……こんなこと言ったら、嫌われるかもって思って……」
千景くんは、静かに目を閉じたまま、私の手をぎゅっと握り返してくれる。