からかわないでよ、千景くん。
*
*
*
目を開けると、部屋の中が暗い。
時計は、18時を指していた。
体を起こしてみると、朝よりずっと楽になってた。
薬が効いてきたのか、頭の重さも少しだけ軽くなってる。
「……ん」
まだ、帰ってなかったんだ。
なずな。
その寝顔を見て、胸の奥がじんわりあったかくなる。
起こさないように、そっと部屋を出てリビングへ。
まだ体はだるいけど、冷蔵庫からポカリを出して、ゆっくり水分補給。
喉を潤した瞬間——
ドタバタと、階段を駆け下りる音。
勢いよく、リビングの扉が開いた。
なずなが、怖い顔して入ってくる。
風邪、うつしたかもって思って、心配になって額に手を伸ばす。
そっと触れると——
なずなの顔が、真っ赤になる。
……え、もしかしてほんとに熱ある?
てか、なんでマスクしてないの? 俺もだけど。
いや、でも——
熱はなさそうだし。体も普通に動いてるし。声も、いつものなずなだ。
じゃあ、なんでそんなに顔赤いの?
……俺が触ったから?