からかわないでよ、千景くん。
「……俺、なんかした?」
やばい。熱があるのを言い訳に、なにかやらかしたのかも。
そういうのは、万全なときにするもんだろ…… なんて、どうでもいいことを考えてると——
「……私が、千景くんに大好きって言ったことも覚えてない?」
不安そうな声。なずなが、俺の顔を覗き込む。
それは—— はっきり覚えてる。
熱でぼんやりしてても。
でもね?
「覚えてないなー」
わざと、とぼけてみる。なずなが、ちょっとだけムッとする。
……かわいい。
もう一回言って。
もう一回と言わず、何回でも言って。なずなからなら、何回でも聞きたい。
「大好き」って言葉が、 俺の中をじんわり満たしてくれる。
少し照れくさそうな顔に、 胸が締め付けられる。
なずなに、嫉妬したって言ってほしい。
なずなにもっと、言葉で伝えてほしい。
「……ほんとは、平さんと仲良くしてほしくない。 でも、千景くんに重いって思われたくもなくて……」
その声が、少し震えてた。
そんなことで、思うわけないのに。