からかわないでよ、千景くん。
熱のせいで、体に力が入らない。
でも、それ以前に—— 千景くんの腕を振り払う勇気が、私にはなかった。
ぎゅっと目を瞑る。
見えないように。感じないように。
「なずな、いい子だね」
耳元で、千景くんの声がした。
その声は、優しくて、あったかくて。
そして、また布団の中に引き戻された。
背中から、千景くんの体温がじんわり伝わってくる。
お腹に回されたままの手が、あまりにも近くて、戸惑う。
でも、なぜか拒めない。
心臓はまだドキドキしてるけど、体はふわっと力が抜けていく。
まるで、安心したみたいに。
(…なんでだろう)
千景くんの腕の中は、あったかくて、静かで。
まるで、夢の中みたいだった。
急に、眠気がきて。
私はそっと、目を閉じた。