からかわないでよ、千景くん。
音楽室の隣の準備室。
千景くんは、いつもそこにいる。
扉をそっと開けると、いつも通り、寝転がってスマホを見てる。
その姿に、ちょっとだけ安心して—— でも、私の顔を確認した瞬間。
「……あー、こっち来る?」
「……」
あれ? いつもだったら嬉しそうに笑って、私の名前を呼んでくれるのに。
今日は、違う。
千景くんは、ゆっくり座り直して、 どこか気まずそうな顔をしてる。
おかしい…… 明らかに、いつもと違う。
私、何かしちゃった?
隣に座って、じっと千景くんを見る。
でも—— 千景くんは、私の方を見てくれない。
なんで……? 何か、私……しちゃった?
病み上がりだから、元気ないのかな?
それとも—— まだ、笹村くんのこと怒ってる……?
「ねっ……千景くん、まだ怒ってるのっ?」
思わず、肩をゆさゆさと揺らす。
でも—— 反応なし。