からかわないでよ、千景くん。



「今日も、笹村くんと仲良くしてたからっ?」



反応なし。



「笹村くんに、頭撫でられたから!?」



言った瞬間—— 千景くんが、私の方を見た。



「はぁ?なにそれ」



あ、まずい。そのことじゃなかったみたい。

笹村くんは、年の離れた妹と弟がいるらしくて、 人の頭を撫でる癖があるらしい。
ちなみに、志緒ちゃんも撫でられてた。そして、こっぴどく怒られてた。



「ね、笹村がなんだって?」



千景くんの肩を揺らしてた私の手を—— 千景くんが、そっと捕まえる。



「そ、そんなことよりっ……千景くん今日様子おかしいよっ!」



できるだけ、話を逸らすように言った。
でも、千景くんは——



「あー……うん」



煮え切らない返事。

えっ……なに? やっぱり、私が何かしたのかな?



「私のせい……?」



せっかく仲直りしたばかりなのに。また、すれ違うなんて——嫌だよ。

私の顔を見て、千景くんはぽつりと呟いた。



「そうじゃなくて……」



その声が、少しだけ苦しそうで。胸が、ぎゅっとなる。

そうじゃないって、言ってくれた。
でも、じゃあ——何?


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