からかわないでよ、千景くん。



「……なずなさ、どんなことするか知ってんの?」



千景くんの言葉に、志緒ちゃんの顔がふっと浮かぶ。同じこと、言われた。



「よ、よく分かってないけど…… でも、千景くんの全部欲しいし、 千景くんにも私のこと全部もらってほしい…… それじゃ、だめかな?」



シーンと静まる準備室。空気が、少しだけ重くなる。

でも、だって—— 千景くんのこと、欲しいんだもん。
千景くんは、そうじゃないの?



「熱出した日、俺がどこ触ったか覚えてる?」



ドクン。心臓が跳ねる。

……あんなの、忘れるわけないよ。
ぼんやりしてた千景くん。
熱で顔が赤くて、目もとろんとしてて。その手が、私の太ももに触れて—— 首筋に、指先が滑って——

その瞬間、息が止まりそうだった。

でも、怖くなかった。むしろ、嬉しかった。
千景くんが、私を欲しいって思ってくれたこと。それが、すごく嬉しかったんだよ。


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