からかわないでよ、千景くん。
家に着いて、さっきよりもっとドキドキしてる。
千景くんをお部屋に通して、隣に座る。
わわわ…… 自分で誘ったのに、この期に及んでくじけそうっ。
どうすればいいのか分からない。
2人きりの空間に、心臓が耐えられないっ。
「の、飲み物取ってくるね!」
思わず立ち上がって、扉に手をかける。
——バタン。
「……っ!」
扉が、後ろから閉じられた。
距離、近い。息がかかるくらい、近い。
「今更、逃げんの?」
千景くんの声が、すぐ後ろから聞こえる。
低くて、ちょっとだけ意地悪で——余裕がなさそうな声。
「……っ」
逃げてるわけじゃない。ただ、どうすればいいか分からなかっただけ。
「学校であんなこと言われてさ、逃がすわけないだろ」
「あっ……」
グイッと手を引っ張られて、向かう先は——私のベッド。
わわわ……!
心臓が、跳ねる。さっきまでのドキドキが、倍になって押し寄せてくる。