からかわないでよ、千景くん。



あの日—— 「千景くんのこと、知りたいよ」って言った。

その言葉が、ちゃんと届いてたのかは分からないけど。
それからなんとなく、千景くんが心を開いてくれてる気がしてた。

今までだったら、絶対「内緒」って言われてたと思う。


でも——



「自販機まで水買いに行ってただけ」



千景くんは、さらっとそう言った。


(…教えてくれた)


それだけのことなのに、胸がじんわりあったかくなる。

かなり嬉しい。
すごく、すごく嬉しい。



「なずなは、転んだの?」



千景くんが、保健室の静かな空気の中でそう言った。



「…はい」



素直に答えるしかなかった。
隠すほどの余裕もないし、膝はまだズキズキしてる。

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