からかわないでよ、千景くん。



「なずなが俺から逃げれないようにするための…檻、かな」


「…檻!?」



思わず声が上ずる。



「こうでもしないと、なずなはすぐ俺の前からいなくなるからね」



千景くんは、ニコって笑ってる。


(逃げるのは…いつも千景くんのほうなのに)


私が近づこうとすると、ふっと距離を取る。
私が聞こうとすると、冗談みたいにかわす。

なのに今は、こんなふうに“檻”なんて言って、私を閉じ込めようとしてる。



(…ずるいよ)


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