からかわないでよ、千景くん。



「今日はこのくらいにしといてあげる」



サラッと前髪を戻して、千景くんは離れていく。



その背中に、最後の一言が落ちてきた。





「なずな。もっともっと、俺でいっぱいになって」





胸が、ぎゅうっと締めつけられる。



もうすでに、いっぱいなのに—— それでも、もっと欲しくなってしまう。




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