からかわないでよ、千景くん。



じゃあ—— あの時の、指を絡めたつなぎ方も。

優しいぎゅーも。 おでこに落ちたキスも。

全部、私をからかってただけ?



「かわいー」って言ったのも。

「俺と組めばよかったのに」って言ったのも。

「なずなのこの体も、心も、頭の中も、全部俺のものだよ」って言ったのも。



全部全部、私だけじゃなかったの?

そう思った瞬間、胸がズキズキして—— 息がうまくできなかった。


(私だけが、特別だと思ってた)


でも、千景くんは、誰にでも優しくて。
誰にでも距離が近くて。
誰にでも、ドキドキさせるようなことをする。


(私だけじゃなかったの?)


その問いが、頭の中でぐるぐる回って、涙になりそうだった。


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