からかわないでよ、千景くん。
授業の終わりのチャイムが聞こえた。
そのあとすぐ、保健室の扉が開く音。
「先生。月城さんいますか?」
千景くんの声だった。
「今寝てるのよ。そっとしといてね」
先生の声のあと、静かにベッド周りのカーテンが開く。
誰かが入ってきた。
私は、目を瞑って寝たふりをする。
「なずな」
千景くんが、甘い声で私を呼ぶ。
サラッと、前髪を撫でられる。
(…なんで来たの?)
そう思うけど、怖くて聞けなかった。
心が、まだぐちゃぐちゃで。
言葉にしたら、崩れてしまいそうで。
そのままじっとしていると—— 千景くんは、何も言わずに出ていった。