エリート官僚と偽りの婚約 ~魔法が解けるまで、あなたと仮初の恋をします~
 私が彼の偽物の婚約者としてパーティーに参加したとき、正俊さんが用意してくれたワンピースは淡いブルーだった。
 今、私が来ているのも淡いブルーのワンピース。でも、あの日のワンピースとは素材もデザインも違う。

 これは、私が自分で選んだワンピース。

 かつん、とパールホワイトのパンプスで歩く。一部にオーガンジー素材が使われたこのパンプスには、薔薇の刺繍があしらわれている。

 私の髪できらめく青い薔薇に合わせた私の装い。
 目の前のガラスの扉に映る私は、きっと今まででいちばん綺麗だ。

 背筋を伸ばしたまま、ガラスの扉を通り抜けた。大理石の床板に、間接照明の暖色が揺らめいている。一歩靴先を進めるごとに、厳かに靴音が響いた。

 洗練された空間。夜の色合いに、上質なきらめきが溶けている。声を掛けてくれたドアマンに微笑む。彼に案内してもらって、フロント階にあるロビーラウンジに入った。

 そこで、きめ細やかなフォームミルクで作られたカフェオレを注文して、20時を待った。

 ロビーラウンジの中央に置かれている、柱時計の振り子が大らかに時を刻む。
 そうして、20時を告げる鐘の音が鳴った。
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