エリート官僚と偽りの婚約 ~魔法が解けるまで、あなたと仮初の恋をします~
「真理菜さん」
お風呂を済ませたあと、正俊さんに呼ばれた。彼と隣り合ってソファに座ると、正俊さんは真剣な表情で話を切り出した。
「俺と一緒に、父のお見舞いに行ってくれないかな」
え、と私は戸惑う。家族の事情に、私が干渉していいのかと戸惑ったから。
正俊さんは、丁寧な声で言い添える。
「もちろん無理にとは言わない。気まずいだろうし、真理菜さんの気持ちを優先して。でも……真理菜さんが許してくれるなら、父に真理菜さんを紹介したい」
「紹介……」
それは、いったい何て。
私の眼差しを受け止めた彼は、「俺の大切な人だって紹介したい」と真っ直ぐに告げた。私が思わず息を呑むと、彼はまるで自嘲するように笑った。
「ごめん……、俺は最後まで臆病だ。真理菜さんを、父に会いにいくための口実にしようとしてる」
正俊さんは、鈍く目を眇めた。
「変なことを言ってごめん。父のお見舞いには俺だけで……」
「私も行きます」
正俊さんの言葉に重ねてそう言ったら、彼は弱くうろたえた。
そんな彼の頬に触れて、私は微笑む。
「前にも言いました。正俊さんに助けてもらったぶん、私もあなたにお返しをしたいです」
私たちを包む空間の手触りは、柔らかい。
お風呂を済ませたあと、正俊さんに呼ばれた。彼と隣り合ってソファに座ると、正俊さんは真剣な表情で話を切り出した。
「俺と一緒に、父のお見舞いに行ってくれないかな」
え、と私は戸惑う。家族の事情に、私が干渉していいのかと戸惑ったから。
正俊さんは、丁寧な声で言い添える。
「もちろん無理にとは言わない。気まずいだろうし、真理菜さんの気持ちを優先して。でも……真理菜さんが許してくれるなら、父に真理菜さんを紹介したい」
「紹介……」
それは、いったい何て。
私の眼差しを受け止めた彼は、「俺の大切な人だって紹介したい」と真っ直ぐに告げた。私が思わず息を呑むと、彼はまるで自嘲するように笑った。
「ごめん……、俺は最後まで臆病だ。真理菜さんを、父に会いにいくための口実にしようとしてる」
正俊さんは、鈍く目を眇めた。
「変なことを言ってごめん。父のお見舞いには俺だけで……」
「私も行きます」
正俊さんの言葉に重ねてそう言ったら、彼は弱くうろたえた。
そんな彼の頬に触れて、私は微笑む。
「前にも言いました。正俊さんに助けてもらったぶん、私もあなたにお返しをしたいです」
私たちを包む空間の手触りは、柔らかい。