なりそこないのシンデレラ ~エリート官僚と偽りの婚約!?~
 デリバリーの夕食は、スープ専門店のセットメニューだった。栄養が溶け込んだクリームシチューと、野菜たっぷりのミネストローネ。結城さんは特に何も言わなかったけれど、過労で倒れた私を気遣ってのメニューなのかもしれないと思った。

「あったかい……! 何だか安心します……」

 他愛のない会話をしながら、優しい気持ちで夕食を終えた。荷解きは、結城さんが手伝ってくれたおかげでもうほとんど終わっていたから、残りは私が自分で片付けると申し出た。明日以降、仕事終わりに少しずつ片付ければ、数日以内には終わるはずだ。

 私は、自室として使うことになった寝室に下がった。白い壁紙の、洗練された一室。
 それでも、狭いアパートに置いていた数少ない家具をいくつか並べたら、何となく馴染みのある景色になっている。

 段ボールから回収したインナー類を蓋付きの収納ボックスに仕舞ったあと、少し迷ってから、リビングに戻った。

 結城さんは、ソファに腰掛けてタブレットを扱っていた。
 物音で気づいたのか、こちらを振り向いた結城さんは、私の目を見て穏やかに微笑む。

「どうかされました?」

 タブレットを置いて、ソファから立ち上がる。

「いえ……」

 どうかしたわけじゃない、という意味合いで緩やかに首を振った私は、おずおずと結城さんに尋ねた。

「寝室を私が使わせてもらうわけですけど、そうしたら、結城さんはどこで寝るんでしょうか?」

 ああ、と合点したように頷いた結城さんは、

「僕はソファで」

 当たり前のように答えた。
 ええっ、と私は大きく慌てる。

「そんな、だめです……! 私がソファで寝ます! ここに住まわせてもらっている立場なのに」

「大丈夫ですよ、お気になさらず。元から、ベッドは使ってなかったんです」

 仕事柄、あまり家にいないので……寝るときもソファの方が気楽なんです。癖がついてしまって――などと結城さんは続けるけれど、「それじゃあ」とは頷けない。

「だって、ここは結城さんの家なのに……私だけベッドなんて……!」

 何とか説得しようと、言葉を重ねる。
 けれど、次に口をひらこうとした刹那、結城さんが一息に、私との距離を詰めた。
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