なりそこないのシンデレラ ~エリート官僚と偽りの婚約!?~
 ビブリオバトルは――書評合戦。複数名の発表者が本のプレゼンを行い、参加者の投票で、「どの本が一番読みたくなったか」を決めるもの。本の優劣やプレゼン能力の優劣、つまり勝敗を決めるものとは違う。でもきっと――この学生さんは、そんな回答を求めているわけじゃない。

 私は、正面から彼女に向き直る。そうして、丁寧さを心がけて、言葉を発す。

「私は、広瀬真理菜と言います。お名前を聞いてもいいですか?」

 当然だけれど、彼女は戸惑った顔をした。少しためらうような間合いがあってから、彼女が答える。

「樋口奈央子です」

 私は、面差しを和らげる。戸惑いつつも答えてくれた樋口さんに、どうか安心してほしい。

「樋口さんは、ビブリオバトルで勝ちたい、と思っていらっしゃるんですね」

「……はい」

 樋口さんは申し訳なさそうな顔で頷いた。そんな彼女に笑いかけて、提案する。

「それなら、一緒に本を探しましょう」

 眼差しを合わせれば、樋口さんの瞳から、不安の気配が少しだけ薄れる。樋口さんと一緒に、書棚のあいだを歩く。
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