なりそこないのシンデレラ ~エリート官僚と偽りの婚約!?~
 平穏な一週間を過ごした。土曜日に仕事を終えて帰宅して、夕食を作っていた。広い部屋にひとり、は何となく寂しいような気持ちになって、ここ数日は賑やかしにテレビをつけていた。世界遺産を紹介する番組の壮大なエンディングテーマが流れて、やがてCMに切り替わった。転職サイトやネットバンクのCMが流れたあと、雰囲気が一転してバラエティ番組が始まった。キャッチーなオープニングメロディとともに、ゲスト紹介。軽やかな賑わいをBGMみたいに聞き流しながら、フライパンの野菜を炒めていた。ここに残り物のハムと卵を合わせれば、オープンオムレツらしきものができあがる。フライパンの火を止めて、冷蔵庫からハムを取り出そうとしたとき、

「ピアニストのAyaneです〜!」

 聞き馴染んだ声が聞こえて、はっと手を止めた。振り返れば、テレビの画面の中で、お姉ちゃんがひらひらと手を振りながら笑っていた。綺麗に髪の毛を巻いて、華やかにお化粧をしたお姉ちゃん。

 お姉ちゃんが、インフルエンサーとして活躍しているのは知っていた。美しすぎるピアニスト――たくさんの女の子の憧れを集めるお姉ちゃんは、テレビに出演するくらいに有名になった。

 私は、静かに息を吐く。

 お姉ちゃんは、会場の拍手に会釈をしながら、用意されている席に座る。

 まるで、お姫様みたいな人生。私とは正反対の、きらびやかな運命。

 冷蔵庫のドアに添えた指先。長さを整えただけの質素な爪。
 ピンクのネイルで彩られた、お姉ちゃんの爪とは全然違う。

 やるせない気持ちで眼差しを伏せたとき、玄関の方から物音が聞こえた。
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