なりそこないのシンデレラ ~エリート官僚と偽りの婚約!?~
結城さんと一緒にご飯を食べた。オープンオムレツみたいなのと、野菜のミルクスープ。久しぶりにふたりで向かい合うダイニングは、最初だけ少しぎこちなかった。
だけど、いくつか言葉を交わしたら、だんだんと緊張が解けていった。
「美味しい。優しい味がしますね」
結城さんが穏やかに褒めてくれるから、嬉しくてくすぐったい気持ちになる。
「お口に合ってよかったです」
私の面差しは自然と和らぐ。
穏やかな空気で食事が続いた。雰囲気が変わったのは、私がスプーンを置いたとき。私より先に食べ終わっていた結城さんが、表情を真剣にして切り出した。
「今度、買い物に付き合っていただきたくて」
「買い物ですか? 私でお役に立てるならお付き合いしますよ」
何を言われるんだろうと身構えていた分、ほっと気を抜きながら答えた。
「ありがとうございます」
結城さんの方も、ほっとしたような顔をしていた。そのまま次の休みを聞かれたので、明後日だと答える。
「では、俺も休みを取りますね。よろしくお願いします」
「こちらこそ。何か欲しいものがあるんですか?」
何の気なしに聞いた。そうしたら、
「広瀬さんの指輪です」
そんな答えが返ってきたから、えっ、と戸惑う。
結城さんは、ひどく申し訳なさそうな顔で続ける。
「俺が勤める文科省の、事務次官に会っていただきたいんです」
「事務次官……省庁でいちばん偉い人?」
「省庁のトップは正確には大臣ですが……そうですね、省庁に勤める国家公務員の最高位になります」
そんなひとにお会いするなんて、と慄くと同時に状況を理解する。
結城さんの依頼目的としては、きっと――、
「今度、事務次官のご令嬢の誕生日パーティーがありまして……そこで、広瀬さんを婚約者として紹介したいんです」
やっぱり、と私は表情を引き締める。結城さんに肩代わりしてもらった奨学金の分、ちゃんと役目を果たさなきゃ。
「わかりました」
少しだけ緊張した声で答えたら、結城さんが眉を下げて笑う。
「何でも、お好きなデザインを選んでください」
「えっ、でも……」
指輪なんて安い物じゃないのに――と戸惑う私に、結城さんが言った。
「贈り主が俺で申し訳ありませんが」
丁重に続けられたその言葉に、どう返答すれば適切なのかわからなかった。
いえ、そんな、なんて曖昧な返事をしながら、テーブルの下の、自分の左手薬指に右手で触れる。
結城さんに指輪を贈られること。
もちろん戸惑っているけれど、でも――嫌だとか迷惑だとは全然思っていない自分に気づく。
同時に、この気持ちを素直に口にすることは、きっとこの場の回答として相応しくないとも思った。
だから口を結んで、そっと目を伏せた。
とくん、と胸の内で心音が響く。
結城さんと過ごす日々は、やっぱり、これまでとは何かが違う。
だけど、いくつか言葉を交わしたら、だんだんと緊張が解けていった。
「美味しい。優しい味がしますね」
結城さんが穏やかに褒めてくれるから、嬉しくてくすぐったい気持ちになる。
「お口に合ってよかったです」
私の面差しは自然と和らぐ。
穏やかな空気で食事が続いた。雰囲気が変わったのは、私がスプーンを置いたとき。私より先に食べ終わっていた結城さんが、表情を真剣にして切り出した。
「今度、買い物に付き合っていただきたくて」
「買い物ですか? 私でお役に立てるならお付き合いしますよ」
何を言われるんだろうと身構えていた分、ほっと気を抜きながら答えた。
「ありがとうございます」
結城さんの方も、ほっとしたような顔をしていた。そのまま次の休みを聞かれたので、明後日だと答える。
「では、俺も休みを取りますね。よろしくお願いします」
「こちらこそ。何か欲しいものがあるんですか?」
何の気なしに聞いた。そうしたら、
「広瀬さんの指輪です」
そんな答えが返ってきたから、えっ、と戸惑う。
結城さんは、ひどく申し訳なさそうな顔で続ける。
「俺が勤める文科省の、事務次官に会っていただきたいんです」
「事務次官……省庁でいちばん偉い人?」
「省庁のトップは正確には大臣ですが……そうですね、省庁に勤める国家公務員の最高位になります」
そんなひとにお会いするなんて、と慄くと同時に状況を理解する。
結城さんの依頼目的としては、きっと――、
「今度、事務次官のご令嬢の誕生日パーティーがありまして……そこで、広瀬さんを婚約者として紹介したいんです」
やっぱり、と私は表情を引き締める。結城さんに肩代わりしてもらった奨学金の分、ちゃんと役目を果たさなきゃ。
「わかりました」
少しだけ緊張した声で答えたら、結城さんが眉を下げて笑う。
「何でも、お好きなデザインを選んでください」
「えっ、でも……」
指輪なんて安い物じゃないのに――と戸惑う私に、結城さんが言った。
「贈り主が俺で申し訳ありませんが」
丁重に続けられたその言葉に、どう返答すれば適切なのかわからなかった。
いえ、そんな、なんて曖昧な返事をしながら、テーブルの下の、自分の左手薬指に右手で触れる。
結城さんに指輪を贈られること。
もちろん戸惑っているけれど、でも――嫌だとか迷惑だとは全然思っていない自分に気づく。
同時に、この気持ちを素直に口にすることは、きっとこの場の回答として相応しくないとも思った。
だから口を結んで、そっと目を伏せた。
とくん、と胸の内で心音が響く。
結城さんと過ごす日々は、やっぱり、これまでとは何かが違う。