なりそこないのシンデレラ ~エリート官僚と偽りの婚約!?~
いつも使っている、四色パレットのアイシャドウ。ほんの少しだけ魔法をかけるみたいに、全然減っていないピンクを使った。繊細なラメがキラキラのピンク。瞼にのせた途端に、何だか落ち着かない気持ちになった。
結城さんと出かける火曜日。デパートに行くと聞いていたから、持っている中でいちばんちゃんとした服を選んだ。社会人になって最初の誕生日に、勇気を出して買ったフェミニン系ブランドのワンピース。せっかく買ったけれど、非常勤職員として困窮した生活を送る自分には似合わない気がして、一度袖を通しただけでクローゼットに仕舞っていた。だからまだ新品同様で――ちゃんと服装を取り繕えそうで、よかった。
支度をして、寝室を出た。結城さんはもう準備を終えていた。
「お待たせしました」
「いえ」
クルーネックのニットの上にキャメル色のジャケットを着た結城さんは、いつもよりラフな雰囲気がある。
「では、行きましょうか」
髪も、いつもより無造作にセットされている。だから、何もかもがいつもと違うみたいに思えて。
自分が着ている服もいつもと違うから、何だか緊張してしまった。
「は……はい」
結城さんに応じた声は、とてもぎこちなく聞こえた。
もっと、ちゃんと打ち解けた感じで応対したいのに――思わず瞳を揺らすと、結城さんがふっと微笑む。
「緊張しますね」
「えっ?」
目を瞬くと、樹木を思わせるような落ち着いた香りが不意に鼻先を掠めた。エッセンシャルオイルよりも深く甘やかなその香りが、結城さんの香水の匂いなのだと遅れて気づく。
彼の薄いくちびるが緩く弧を描く。
「広瀬さんが、とても綺麗だから」
「え……!?」
調子の外れた声を上げて固まる私に、結城さんが続ける。
「ワンピース、良くお似合いです。ラベンダーの花みたいな色だ」
完璧な微笑みでそう言われた。結城さんの表情に躊躇いや照れは一切ない。
否応なく胸が高鳴って、上手く言葉を返せなかった。
結城さんと出かける火曜日。デパートに行くと聞いていたから、持っている中でいちばんちゃんとした服を選んだ。社会人になって最初の誕生日に、勇気を出して買ったフェミニン系ブランドのワンピース。せっかく買ったけれど、非常勤職員として困窮した生活を送る自分には似合わない気がして、一度袖を通しただけでクローゼットに仕舞っていた。だからまだ新品同様で――ちゃんと服装を取り繕えそうで、よかった。
支度をして、寝室を出た。結城さんはもう準備を終えていた。
「お待たせしました」
「いえ」
クルーネックのニットの上にキャメル色のジャケットを着た結城さんは、いつもよりラフな雰囲気がある。
「では、行きましょうか」
髪も、いつもより無造作にセットされている。だから、何もかもがいつもと違うみたいに思えて。
自分が着ている服もいつもと違うから、何だか緊張してしまった。
「は……はい」
結城さんに応じた声は、とてもぎこちなく聞こえた。
もっと、ちゃんと打ち解けた感じで応対したいのに――思わず瞳を揺らすと、結城さんがふっと微笑む。
「緊張しますね」
「えっ?」
目を瞬くと、樹木を思わせるような落ち着いた香りが不意に鼻先を掠めた。エッセンシャルオイルよりも深く甘やかなその香りが、結城さんの香水の匂いなのだと遅れて気づく。
彼の薄いくちびるが緩く弧を描く。
「広瀬さんが、とても綺麗だから」
「え……!?」
調子の外れた声を上げて固まる私に、結城さんが続ける。
「ワンピース、良くお似合いです。ラベンダーの花みたいな色だ」
完璧な微笑みでそう言われた。結城さんの表情に躊躇いや照れは一切ない。
否応なく胸が高鳴って、上手く言葉を返せなかった。