なりそこないのシンデレラ ~エリート官僚と偽りの婚約!?~

 世界のすべてが、遠ざかった。

 色が失われて、真っ暗の世界。つま先が何かに躓いて、踵からパンプスが脱げてしまう。体勢が大きく崩れたのがわかった。

 訪れる痛みを覚悟した。
 だけど、痛みの代わりに、力強い温もりが私を包んだ。

「大丈夫ですか」

 聞き知った声。
 のろく瞼をひらけば、見知った面差しと視線がかち合う。

 結城(ゆうき)正俊(まさとし)さん。
 たった今日まで、私が勤める東都大学図書館の副館長だったひと。

 大丈夫です、と答えたつもりだった。だけど、私の耳には何も届かなくて、おそらく声になっていなかった。

 結城さんが、私の頬に指先を触れさせる。

 ああ、やっぱり格好いいな。長い睫毛と、すっと通った鼻筋がきれい――ひどく場違いなことを考えた、その瞬間に意識が黒に塗りつぶされた。
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