エリート官僚と偽りの婚約 ~魔法が解けるまで、あなたと仮初の恋をします~
 かつん、と履き慣れないパンプスのヒールが鳴った。新品同様のワンピースに合わせて、数回しか使っていない他所行き用のパンプスを履いた。

 今のこのときだけ、私は違う私になった気がした。12時の鐘が鳴ったら、呆気なく解ける魔法みたいに。

 幸せな物語の世界なら、魔法が解けた先にガラスの靴が取り残されて、王子様に見つけ出される結末がある。

 私の物語では、きっとそんな展開は訪れない。
 でも――それなら私の世界は、いったいどんな結末を紡ぐのだろう。
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