エリート官僚と偽りの婚約 ~魔法が解けるまで、あなたと仮初の恋をします~
 正俊さんと一緒にタクシーで向かったのは、都内の高級住宅街。車窓から見える街全体におおらかな気品があって、時間の流れが束の間緩やかになったように感じられる。

 この街で生きているひとたちは、どんなふうに世界を見つめているんだろう。
 気後れする気持ちは、タクシーを降りた途端にいっそう強くなる。ヨーロッパ調の瀟洒な門の向こうには、カントリーハウス風の広い邸宅が待ち構えている。

 思わず俯きたくなってしまう。それでも、ぴんと背筋を伸ばして前を向いて歩く。ちゃんと、正俊さんの婚約者として相応しい相手に見えるように。

 私には、300万円分の役目を果たす義務がある。
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