エリート官僚と偽りの婚約 ~魔法が解けるまで、あなたと仮初の恋をします~
パーティー会場は、中庭に面したバンケットルームだった。開放された扉から、春の気配を含んだ風が室内へと吹き込む。中央のテーブルにはフレンチのオードブルやオープンサンドが置かれていて、まるでホテルのビュッフェのような雰囲気だ。
パーティーの開始までは、あと20分ほど時間がある。室内では、早めに集まった20人程の招待客が談笑している。そのほとんどが、今日の主役である紗良さんと同世代。だけど、かっちりとしたスーツを着た熟年世代の男性の姿もいくつかある。そのひとたちに、私たちは挨拶をしに行った。どうやら、様々な省庁の偉いひとたちのようだった。
「――そうですか。結城くんが出向していた大学図書館の」
私たちが大学図書館で知り合ったのだと言うと、誰もが優しい顔をした。でも、
「結城くんは素晴らしい官僚だ。ぜひ、彼を支えてあげてください」
でも――まるでそのひとたちから侮られたように感じたのは、私の考え過ぎ?
穏やかな微笑みを浮かべる経済産業省の部長さんに会釈をする。そうして踵を返しながら、考え過ぎだよと思い直す。だって、皆さんすごく優しかったのに。
ぎゅっとくちびるを引っ張って、前を向いて歩く。正俊さんの婚約者に相応しい女性として振る舞わなければならない。だから、暗い顔なんてしない。
省庁の皆さんへの挨拶が終わると、正俊さんの大学の同窓生に囲まれた。皆さんの話に笑顔で応対する中で、正俊さんが私立の名門K大学の出身なのだと知る。
ということは、ここにいる皆さんもK大学の出身だ。正俊さんを「先輩」と呼んだ紗良さんも、おそらくは。
すごいひとたちなんだなと思わず気後れしたとき、ブルーグレーのスーツを颯爽と着こなした男性が、正俊さんの肩に手を回しながら言った。
「真理菜さんはさ、どうやって結城を落としたの?」
「えっ……」
単刀直入な質問に困惑すると、正俊さんが彼に呆れたような視線を向ける。
「プライバシー」
会話を終わらせようとする正俊さんに、相手は不服そうな表情をする。
「だっておまえ、どんな美人に告白されたって断ってたろ。真理菜さんは何が違ったのか気になるじゃん」
食い下がる彼に、正俊さんははっきりとため息を吐いた。
そのまま黙殺するのかと思ったら、彼は表情を変えないまま端的に言った。
「俺が真理菜さんに惚れた。だから、俺から交際を申し込んだ。以上だ」
正俊さんがそう言った途端に、皆さんの視線が一気に私に集まる。皆さんの目が――本当? と私に訊いている。
「もういいだろ」
戸惑う私を庇うように、正俊さんが私の肩を抱いた。
「行きましょう、真理菜さん」
私の耳元で囁いて、正俊さんは私を窓際まで促す。あと数分で、パーティーが始まる11時だ。
パーティーの開始までは、あと20分ほど時間がある。室内では、早めに集まった20人程の招待客が談笑している。そのほとんどが、今日の主役である紗良さんと同世代。だけど、かっちりとしたスーツを着た熟年世代の男性の姿もいくつかある。そのひとたちに、私たちは挨拶をしに行った。どうやら、様々な省庁の偉いひとたちのようだった。
「――そうですか。結城くんが出向していた大学図書館の」
私たちが大学図書館で知り合ったのだと言うと、誰もが優しい顔をした。でも、
「結城くんは素晴らしい官僚だ。ぜひ、彼を支えてあげてください」
でも――まるでそのひとたちから侮られたように感じたのは、私の考え過ぎ?
穏やかな微笑みを浮かべる経済産業省の部長さんに会釈をする。そうして踵を返しながら、考え過ぎだよと思い直す。だって、皆さんすごく優しかったのに。
ぎゅっとくちびるを引っ張って、前を向いて歩く。正俊さんの婚約者に相応しい女性として振る舞わなければならない。だから、暗い顔なんてしない。
省庁の皆さんへの挨拶が終わると、正俊さんの大学の同窓生に囲まれた。皆さんの話に笑顔で応対する中で、正俊さんが私立の名門K大学の出身なのだと知る。
ということは、ここにいる皆さんもK大学の出身だ。正俊さんを「先輩」と呼んだ紗良さんも、おそらくは。
すごいひとたちなんだなと思わず気後れしたとき、ブルーグレーのスーツを颯爽と着こなした男性が、正俊さんの肩に手を回しながら言った。
「真理菜さんはさ、どうやって結城を落としたの?」
「えっ……」
単刀直入な質問に困惑すると、正俊さんが彼に呆れたような視線を向ける。
「プライバシー」
会話を終わらせようとする正俊さんに、相手は不服そうな表情をする。
「だっておまえ、どんな美人に告白されたって断ってたろ。真理菜さんは何が違ったのか気になるじゃん」
食い下がる彼に、正俊さんははっきりとため息を吐いた。
そのまま黙殺するのかと思ったら、彼は表情を変えないまま端的に言った。
「俺が真理菜さんに惚れた。だから、俺から交際を申し込んだ。以上だ」
正俊さんがそう言った途端に、皆さんの視線が一気に私に集まる。皆さんの目が――本当? と私に訊いている。
「もういいだろ」
戸惑う私を庇うように、正俊さんが私の肩を抱いた。
「行きましょう、真理菜さん」
私の耳元で囁いて、正俊さんは私を窓際まで促す。あと数分で、パーティーが始まる11時だ。